分からなさに「愛してるよーーー」って叫ぶことしかできない
頭の中でこれだけの声がしゃべっていて、これだけ辛くて、でもその辛さを乗り越えたくてこれだけ考えているのに、身体はただ満員電車でどこの誰か知らないスーツの男に囲まれているだけ。この人たちも何か目的があってこれに乗っていて、たぶんそれとは全く違うことを考えている。
目に見えないものの多さよ
分からないことだらけの世界よ
「私のことどう思ってるの?」
こんなこと、電話越しに聞くなんてナンセンスだ。
「で、さとみはどうだった?」
相手を目の前にしたって、やっぱり、暴力的な問い。
言葉にしてもらわなきゃ分からないなんて、そんな傲慢なことが許されていいのかなと思いながら、それでも、不安のままに。
「ほんと悪魔みたい、小悪魔どころじゃないよ」と笑われた
抱きしめられながら、これでよかったのかな?と思う。
私は何が欲しかったのだろう。
でもこれだけ誠実に触れてくれる人なんて初めて。
自分で命を絶って幸せだった人
天寿を全うして不幸だった人
残されていない歴史の数々
私が笑わせた人
私が悲しませた人
その他大勢の出会うことのない人間たち
なにが悔しいって、何もできないことだ
何かできたとしたって、あの頃ー本当に目に見えるものしか信じられなかったあの頃ーの私を救えるなんておこがましい。
だけど、だけどどうしても、
私は「出来るようになりたい」と望む。
「もっともっと見たい」と。
愛すべき世界、捨てたもんじゃない現代社会を、現実的に生きることを望む。
ただ目の前の人を幸せにしたいから。
ただ少しだけでも心を温められたら。
いくら情報を収集したところで、先人に学んだところで、インフルエンサーを模倣したところで、
体験だけが真実だ。
それしか、信じられないから。